こんにちは、ちゃはちです。
年末の風物詩は色々ありますが、サラリーマンにとっては会社で行う「年末調整」も恒例行事ですよね。決して面白いものではないですが。
さて、我が家の場合妻が12月から産休→1月に出産→しばらく育休という予定になってるんですが、この場合妻を僕の「扶養」にした方がいいのでしょうか?
ということで、今回は出産を控えた妻を持つサラリーマンの「扶養」について、特に税金の観点から考えてみます。
目次
考えるべき「扶養」は2つある
一般的なサラリーマンが妻の妊娠・出産に際して「扶養にするかどうか」といった場合に考えないといけないのは
- 社会保険上の扶養
- 所得税上の扶養
主にこの二つです。
妻
ちゃはち
共働き夫婦の出産と社会保険
社会保険の中でも「扶養」によって保険料に違いが出てくるのは「健康保険」と「年金」です。配偶者がどちらかの「扶養」に入っていれば保険料は一人分で済みます。
「おひとりさま分無料」には何でも手を出すのが私のスタンスよ。
妻
ちゃはち
「産休・育休中の社会保険料は免除」
になるからです。
要件などは年金機構のHPでご確認ください。
つまり共働き夫婦の妻が、妊娠後退職せず、いずれ仕事の復帰を前提に産休・育休を取得した場合には、妻は夫の扶養になることなく自分の社保に加入したままでいいってことです。
そもそも社会保険料を払わなくていいわけですから、扶養なんて考える必要が無いということです。
ただしこの免除を受けるには会社経由での手続きが必要になります。
大きな会社であればあまり心配はないかもしれませんが、担当者のレベルによってはそもそもその事を知らないという可能性も無いとは言えません。
産休・育休に入る前に念のため会社へ確認をしておくことも良いかも知れませんよ。
担当者が知らなかったために利用されない制度って意外とあるものです。
所得税と妻の「扶養」
ちゃはち
妻
ちゃはち
その中でも特に配偶者が対象のものを「配偶者控除」と言います。
ちなみに「扶養控除」という言葉をよく聞くと思いますが、これは配偶者以外の親族を扶養している時に適用されるものです。
配偶者控除の対象となる配偶者(「控除対象配偶者」と言います)の要件は以下のとおり。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係は対象外)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が38万円以下であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
また、平成30年より控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は配偶者控除を受けられなくなりました。
ええ、僕には関係ありません。
高額所得者の方は潔くあきらめたうえ、いつかその有り余る財力で僕をハワイ旅行にでも連れて行って下さい。
つまり(?)、一般的なサラリーマンの場合、その年(1月1日から12月31日まで)の
自身の合計所得金額が1,000万円以下
かつ
配偶者のその年の合計所得金額が38万円以下
であれば、配偶者控除を受けることができるので、税金が安くなるという事です。
合計所得金額って?
妻
ちゃはち
会社員で給与収入しか無い人の場合「合計所得金額」とは
「給与収入」から「給与所得控除」を差し引いた金額
のことを言います。
妻
ちゃはち
給与所得控除とは
給与所得控除を説明する前に、税金計算上の「所得」について考えてみます。
例えば事業を営んでいる場合「利益」は
利益=売上(収入)−費用
と言う式で算出されるのはイメージ出来ると思います。
しかし税金の世界では、(ちょっと乱暴な言い方ですが)「売上(収入)」から費用を引いて残った「利益」に相当するものを「所得」と呼び、この「所得」に税率をかけて税額が計算されます。
利益≒所得
所得×税率=税額
でも、収入が「給与」の場合、事業と違って差し引く「費用」なんて無いよね?
妻
確かに事業収入などと違って、給与収入には差し引かれる明確なコストは無いように思えます。
でも実際には通勤のための靴やカバン、スーツ。乗り気じゃないのに上司に無理やり2次会に連れていかれた挙句、結局自腹を切ることになった場末のスナック代など、サラリーマンをやっていくうえでどうしてもかかってしまう必要コストも無くはありません。
そこで給与収入に関しては、その人がもらう給与の金額に応じて一定の決まった金額を差し引いて給与所得を計算することができることになっています。
この差し引ける金額のことを
「給与所得控除」
と言います。
そして、給与収入から給与所得控除を差し引いた金額を「給与所得」と呼びますが、給与収入しか無い人の場合はこの「給与所得」が「合計所得金額」と同額になります。
給与収入に応じた「給与所得控除」は以下のようになっています。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%(65万円に満たない場合には65万円) |
180万円超
360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
360万円超
660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
660万円超
1千万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
1千万円超 | 220万円(上限) |
ちゃはち
給与収入年間500万円の場合
給与所得控除額
500万円×20%+54万円=154万円
給与所得(=合計所得金額 ※給与収入しかない場合)
500万円-154万円=346万円
さて、話を戻します。
給与収入しかないサラリーマンの場合、先ほど出てきた配偶者控除の要件「配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下」というのは「配偶者の年間給与収入が103万円以下」と言うことになります。
給与収入103万円=合計所得金額38万円(給与収入のみの場合)
給与収入103万円×40%=41.2万円
41.2万円<65万円
∴給与所得控除65万円
給与収入103万円-給与所得控除65万円=給与所得(合計所得金額)38万円
また、「納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下」というのは、「納税者本人の給与収入が1,220万円以下」と言うことです。
給与収入1,220万円=合計所得金額1,000万円(給与収入のみの場合)
給与収入1,220万円>1,000万円
∴給与所得控除220万円
給与収入1,220万円‐給与所得控除220万円=給与所得(合計所得金額)1,000万円
つまり産休・育休に入る妻のその年(1月1日から12月31日)の給与収入が103万円以下で、かつ、夫のその年の給与収入が1,220万円以下であれば配偶者控除の適用を受けることが出来るということになります。
配偶者控除でいくら税金が安くなるのか
妻
ちゃはち
妻
ちゃはち
配偶者控除は「所得控除」と呼ばれるもので、税金の計算過程で税率をかける前の「所得」を減額してくれるものです。
給与しか収入が無い人の場合、簡単に言うと…
税額の計算(給与収入のみの場合)
給与収入-給与所得控除=給与所得
給与所得-所得控除(配偶者控除等)=課税所得
課税所得×税率=税額
という過程で納める税金が計算されます。
ちなみに住宅ローン控除などは「税額控除」と呼ばれ、最後の税額から直接減額するものです。
「税額控除が10万円」なら納める税金が10万円安くなりますが、「所得控除が10万円」だと、「10万円×税率」分の税金が安くなるということですので注意してください。
配偶者控除は控除を受ける納税者の合計所得金額により3パターンに分かれます。
控除を受ける納税者本人の 合計所得金額 |
控除額 |
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
※配偶者が70歳以上の場合上記表よりも控除金額が大きくなりますが、ここでは割愛します。
では、わかりやすくするために、合計所得金額を給与収入に換算してみます。
控除を受ける納税者本人の 給与収入金額 |
控除額 |
1,120万円以下 | 38万円 |
1,120万円超1,170万円以下 | 26万円 |
1,170万円超1,220万円以下 | 13万円 |
例えば、納税者本人の合計所得金額が900万円(給与収入1,120万円)以下の場合は、配偶者控除により最大38万円を所得から控除できます。
税額は所得に税率をかけて求めるので…
38万円×税率
分の所得税が安くなるということになります。
所得税の税率は累進(超過累進)税率といって、課税所得の大きさによって段階的に税率が高くなります。
課税される所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円を超え 330万円以下 | 10% |
330万円を超え 695万円以下 | 20% |
695万円を超え 900万円以下 | 23% |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
上記の表のとおり、もし所得金額が195万円以下で税率が最低税率の5%だったとしたら、
配偶者控除38万円×5%の19,000円分年間の所得税が減額されます。
例えば所得金額が300万円の場合には、
【300万円×10%】・・・ではなく
【195万円×5%+(300万円-195万円)×10%】
のように、所得を「195万円までのゾーン」「195万円超330万円までのゾーン」などに分解したうえで、それぞれのゾーンに応じた税率を掛けたものを最後に足し算します。
また、住民税でも配偶者控除は適用されます。
住民税の場合控除される所得は所得税とは違い最大で33万円、税率は原則一律10%なので、
最大33万円×10%の33,000円、
年間の住民税が安くなります。
ちゃはち
つまり、産休・育休に入ることによってその年の給与収入が103万円以下になるのであれば、配偶者控除の適用を受けることで最低でも年間52,000円の税金が安くなる!ということになります。(住民税は翌年6月以降の給与天引き分から減少します。)
103万円を超えても「配偶者特別控除」がある!!
妻
ちゃはち
妻
会社員である配偶者の給与収入が103万円を超えていて、配偶者控除の対象から外れていてもまだチャンスがあります。それが配偶者特別控除です。
配偶者控除に「特別」が挟まっただけのまぎらわしい名称ですが、平成30年にこの制度が改正され、さらに控除の幅が広がりました。
- 控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること
- 配偶者が民法の規定による配偶者であること
- 配偶者が控除を受ける人と生計を一にしていること
- 配偶者がその年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払いを受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと
- 配偶者が他の人の扶養親族となっていないこと
- 配偶者の年間の合計所得金額が38万円超123万円以下であること(給与収入のみの場合年収103万円超201.6万円未満)
基本的な要件は配偶者控除とほとんど変わりませんが、大きく違うのは⑥の所得金額です。
配偶者控除では適用外となる合計所得38万円(給与収入103万円)を超えた人が対象となっています。
先ほどの「配偶者控除」とこの「配偶者特別控除」の関係を整理すると…
配偶者控除と配偶者特別控除
配偶者の給与収入が…
103万円まで・・・配偶者控除
103万円超201.6万円未満・・・配偶者特別控除
※給与収入のみの場合
が適用されるということです。
配偶者特別控除は控除を受ける納税者の合計所得金額に加えて、配偶者の合計所得金額に応じて段階的に控除額が設定されています。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 額 |
38万円超 85万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
85万円超 90万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
90万円超 95万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
95万円超 100万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
100万円超 105万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
105万円超 110万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
110万円超 115万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
115万円超 120万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
120万円超 123万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
こちらも「合計所得金額」を「給与収入」に換算してみます。
控除を受ける納税者本人の給与収入金額 | ||||
1,120万円以下 | 1,120万円超 1,170万円以下 |
1,170万円超 1,220万円以下 |
||
配 偶 者 の 給 与 収 入 金 額 |
103万円超 150万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
150万円超 155万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
155万円超 160万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
160万円超 166.8万円未満 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
166.8万円以上 175.2万円未満 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
175.2万円以上 183.2万円未満 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
183.2万円以上 190.4万円未満 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
190.4万円以上 197.2万円未満 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
197.2万円以上 201.6万円未満 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
控除を受ける納税者の給与収入が1,220万円以下であれば、配偶者の給与収入が最大で201万6千円未満(201万5999円以下)までは控除を受けることが出来ます。
さすがに上限ギリギリだと控除額もスズメの涙ではありますが…。
さらに先ほどの「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の控除額一覧を合体させてみます。
控除を受ける納税者本人の給与収入 | ||||
1,120万円以下 | 1,120万円超 1,170万円以下 |
1,170万円超 1,220万円以下 |
||
配 偶 者 の 給 与 収 入 |
103万円以下(配偶者控除) | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
103万円超 150万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | |
150万円超 155万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
155万円超 160万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
160万円超 166.8万円未満 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
166.8万円以上 175.2万円未満 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
175.2万円以上 183.2万円未満 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
183.2万円以上 190.4万円未満 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
190.4万円以上 197.2万円未満 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
197.2万円以上 201.6万円未満 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
妻
ちゃはち
このようにこれまで最大の控除額を受けるためには年間103万円に抑える必要があった配偶者の給与収入が、配偶者特別控除の改正により150万円まで拡大されました。
これによりパート社員などが年末付近で収入を103万円に抑えるため収入調整を行ういわゆる「103万円の壁」が「150万円の壁」になったと言われています。
ただ余談ですが、「所得から控除できる金額」という観点では103万円も150万円も効果が変わらなくなりましたが、配偶者本人の税金という観点で言うとまだ違いがあります。
103万円までは本人の所得税はゼロ円となりますが、150万円の場合は本人の所得税が発生する可能性があるのです。(103万円の給与収入でも住民税は発生する可能性があります)
「一円たりとも所得税を払いたくない!」という歪んだ思想の方は、変わらず103万円が1つの壁になります。
産休・育休中の手当は所得になるのか
さて、ここまでの内容から、妻が産休・育休に入れば所得税上の控除対象になる可能性が高くなりそうなことが分かりました。
でも、よーく考えると「出産育児一時金」や「育児休業給付金」さらに「出産手当金」などの公的手当をもらうことになります。
っていうか貰えるものは何でももらう!それが私のスタンスよ。
妻
ちゃはち
なぜなら…
これらの手当については所得に含まれない
とされているからです。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1191_qa.htm#q5
ただし産休・育休期間中にも会社から給与や手当をもらえる人は別です。
あくまで健康保険法や雇用保険法の規定により支給される公的な手当の話です。
ですから、産休・育休により公的手当以外に妻の収入が無くなった場合には、夫の控除対象配偶者として所得控除を受けられる可能性が高くなります。
ただし妻の所得金額はあくまでその年の12月31日の現況で判断されます。
つまり「1月1日から12月31日までの1年間の収入金額が結果としてどうだったのか」が問題ですので、産休・育休に入るタイミングや仕事復帰するタイミングによっては控除対象の収入を超える可能性も出てきます。
まとめ
出産にあたり妻が産休・育休に入る場合、社会保険については妻本人の保険料が免除されるため「扶養」を気にする必要はありません。
一方所得税(住民税)についてはその年の給与収入額により、配偶者控除又は配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
また、平成30年からは控除対象が拡大されていてさらに可能性が高くなりました。
ただし、産休・育休に入るタイミング、仕事復帰するタイミングによって年間(1月1日から12月31日)の収入は前後するので注意が必要です。
我が家の場合…
産休に入る年・・・
12月に産休に入り収入がなくなるが、産休に入る前1月から11月までの収入がそれなりにあるので配偶者控除、配偶者特別控除の対象外。
翌年・・・
1月に出産し、子供が1歳になるまで1年間育児休業となるため収入なしで配偶者控除の対象。
翌々年・・・
子供が1歳になる1月または4月に仕事復帰し、ほぼ一年間働くため配偶者控除、配偶者特別控除の対象外。(ただし保育園に入れず育休が延長となった場合には別)
といったところでしょうか。
こんな感じで、配偶者控除や配偶者特別控除の対象になるかは産休・育休に入るタイミングによって変わってきます。
もし控除を受けられるのであれば、所得税・住民税が安くなります。その場合には年末調整で忘れずに手続きをとりましょうね。
妻
以上。参考にしていただければ幸いです。
では、また。
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